おさらい
前編の記事では着腕法(ちゃくわんほう)、枕腕法(ちんわんほう)をご紹介しました。
着腕法はせまい範囲で精密に描けるかわり、大きな画面に弱く、まめに手首を置いている場所を動かす必要があります。
枕腕法はやや範囲がせまいが着腕法より筆のリーチが長く、フォームが複雑で移動がすこし厄介。
上記2つは、もう試し書きしましたか?それでは、後編です。
提腕法 難易度★★★☆

提腕法(ていわんほう)は、筆を持っている腕を軽く机に乗せて、軽やかに広い範囲を描く持ち方です。
・長所
小さい面、細い線を描く構えの中では、かなり広い範囲を描くことができます。
線の入り抜き強弱の限界も申し分ありません。
・弱点
この構えでは、腕に重心をかけないようにしながら、かつ筆先が遊ばないよう、ペンを正確にぴったり掴んでいなければいけません。
フォームが固くなりすぎるとせっかくの表現の幅が狭まり、かといってゆるく持ちすぎても自由にならず、勝手に線が揺れたり、太さが変わったり、困ったことになってしまいます。
総じてコントロールする難易度が高く、心身の消耗が激しくなるでしょう。
大きな画面で線数の多い作業、大量の枚数をこなす時などに、不安定になりやすい点は注意が必要です。
懸腕法★★★★

懸腕法(けんわんほう)は、肩に力を入れないようにひじを張って構え、
上半身を机上に付けずに描く持ち方です。
・長所
究極の構えです。理論上はこの構えでどんな線でも引けることになります。
あらゆる作業ができます。かつ、他のどの構えでもできないような、ダイナミックな表現、変則的な表現も可能になるでしょう。
しかし実際のところ、人類の身体運用能力はそこまで高くはないので、
力強い大きな線を引く目的で使われるのが一般的です。
・弱点
あらゆることができる反面、何もできないことがあります。
まず、見た目の通り、体力の消耗が著しいフォームです。
繊細な線、安定した線を連続して引くにもとても不向きでしょう。
そもそも構え自体が難しく、習得が大変で、自分の作画作業に生かせるようになるまで時間がかかる可能性もあります。
使う前の段階から神経をとがらせ、使いどころを計画的に考え、自分にとって効果的なタイミングで上手に活用できるかどうかがキーとなるでしょう。
まとめ
前編、後編合わせて4つの筆ペンの持ち方をご紹介しました。
他にもさまざまなフォームが存在しますが、この4つの使い分け、組み合わせだけでも、筆ペンの線の幅、描きやすさはエーゲ海のように美しく広大で豊かなものとなります。(黒海と書いたほうが良かったかもしれませんね)
ご存知の通り、地球上の海はエーゲ海や黒海だけではありません。
前編の冒頭でも触れましたが、これらの解説は、あくまで筆ペンを作画道具に用いる上で最適化した、執筆者独自の簡単な解説です。
更に、筆ペンには筆同様に、筆の形や大きさの種類、インクの種類、穂先の材質の種類など、無限とも思える組み合わせの要素が存在します。
その偉大な全貌を捉えることは、弘法大師やマッコウクジラですら難しいであろうこと。
それでも興味を抱いたらぜひ学んでみてほしいこと。
しかし各自にとって必要な点さえ学べていれば、全然気にしなくても困らないであろうこと。
この三点を最後に押さえたら、前後編に渡るこの記事はおしまいです。
お気に入りの東方キャラを、お気に入りの画材で、心の趣くまま、もっと深く楽しみましょう!
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