現実じゃない世界の物語
昨今流行のラノベのジャンルに「異世界ファンタジー」があります。
ファンタジーから派生したジャンルで「異世界召喚もの」や「異世界トリップ」ともいわれ、中世ヨーロッパ風であったりゲーム(VRMMO)の世界であったりと舞台は様々ですが、おおむね【現実ではない場所に行くこと】を前提とした物語のことを指します。
読者は、現実社会にいた主人公と同じ目線で物語を追っていくことになる訳ですが、そこで重要になってくるのが、【魔術】【魔法】【呪文】などの非現実的要素です。
絶対になければならないということはありませんが、現実にはない非現実的要素を登場させることで、「異世界」であることがより強く強調されます。
現実に潜む魔術
さて、異世界を描く上で欠かせない【魔術】【魔法】【呪文】などの非現実的要素ですが、無の状態から創作するとなると、なかなか難しいですよね。
思いつきだけで創った非現実的要素は、リアリティに欠け、どこか痛々しくなってしまうものです。
何かモデルとなるもの、もしくはベースとなるものがあると創りやすいのですが、私達の知る現実世界に【魔術】【魔法】【呪文】は存在していないのでしょうか。
実は、あります。
代表的なところですと、神社の神主さんの祝詞(のりと)は、一種の呪文と言ってもいいのではないでしょうか。
よく見る♂♀も、実は錬金術記号なんです。
朝の情報番組に欠かせない星占いも、西洋神秘思想の一つです。
お年寄りに、昔のおまじないを聞いてみるのもいいかもしれません。
その地方独特のものを教えていただけるかもしれませんよ。
そういった「現実の小さな情報」を、足したり引いたり掛けたりしながら、より変化・複雑化させていくことで、異世界の新しい【魔術】【魔法】【呪文】を生み出すヒントにしてみましょう。
呪文のアレンジの具体例
かなり年配の方ならご存知かもしれませんが、古くからある日本のおまじないに、「猿沢の池のキツネ」というのがあります。
これは赤ちゃん夜泣きを止めるためのおまじないで、呪文にして唱えたり、お札に書いて柱や玄関扉に貼ったりするのですが、地域によって微妙に文言が違うようです。
例えば、
「猿沢の池のほとりに住むキツネ、昼は泣いても夜は泣くまい」
「猿沢の池のほとりに鳴くキツネ、あのキツネ鳴くともこの子泣かすな」
「猿沢の池のほとりに住むキツネ、わが子泣くともこの子泣かすな」
など。
ちなみに、筆者の祖母が生まれた地域では、
「さるさわのいけのほとらぎつね ひるはないてもよるはなくな あびらうんけんそわかあびらうんけんそわかあびらうんけんそわか」
と書いて玄関扉に貼っておかなければならなかったそうです。
同じおまじないなのですが、すべて平仮名であることと、【ほとらぎつね】というキツネの名称のアレンジ、それに【あびらうんけんそわか×3】が加えられたことで、一気に呪文感が増したような感じがしますよね。
文章は聴覚でなく視覚で捉えるものですから、こういった変化をつけることで、「特殊な呪文のようだ」と読者に思わせることができるのです。
まとめ
異世界ファンタジーにおける【魔術】【魔法】【呪文】は便利なアイテムですが、使い方を間違えると、ただの厨二病になります。
上滑りな印象を避けるためにも、非現実的要素の中に、どこか現実味を帯びた部分を残しておくといいでしょう。
この記事を書いた人

生活環境のせいか、比較的レトロジャンルが得意(な気がしている)。