モチーフの観察は基本にして至難
絵を描くとき、実物の資料があることは理想です。
170cmの中肉中背の北米人男性を描くなら、
170cmの中肉中背の北米人男性のモデルを目前にするのが理想であり、
コンビニで売られている125円のボールペンを書くなら、
コンビニで売られている125円のボールペンが手元に欲しいものです。
実物が資料として優れている理由はもちろん、
実物には最も多くの生きた情報が含まれているからです。
しかし、有り余る情報量がゆえ、実物を観察して描くことは最も難しいことでもあります。
人間の目は勝手に観察対象を補正する

絵を描く為には自由に観察し、望み通りの情報を得たいところです。
しかし人間の脳は勝手に視覚情報を補正し、人類がこれまで生存してきた歴史の中で有利だった情報のセットに書き換えてしまいます。
二つの瞳はそれぞれの視覚情報を勝手に一つに合成します。
縦長のものは過剰に縦長に見え、横長のものは過剰に横長に見えがちです。
顔のようなものを見ると目や口や表情筋にばかり注意がいきます。
男性はコントラストの高い映像を認識しがちで、女性は色彩の豊かな映像を認識しがちです。
視界の両端の景色は、ほとんど脳が経験と想像で補って勝手に作り出します。
気の遠くなる反復練習以外に、効果的な解決法は無いのかと誰もが考えるのも無理はありません。
目の数を増減させよう

気の遠くなる反復練習は死ぬまでやらざるを得ません。
それとは別に、片目を瞑って観察するというテクニックはご存知かと思います。
これも反復練習と同様に有効です。
逆に、目の数を増やすという方法もあります。カメラで撮影してみるのです。
文字通り、新しい視野を得ることができます。
カメラによって見え方が異なる
絵を描く上での観察の補助に使うカメラに重要なのは、
1台でも複数でも、なるべく同じカメラを継続して使うことです。
レンズや画素などで空間の見え方は違ったものになるので、
使い込んで『写り方の癖』をよく把握していなければ、
第三の目としての参考にはあまりならないことがあるからです。
肉眼にせよカメラにせよ、空間を唯一無二の完全な視点で客観的に見れるというわけではなく、一つの視点に過ぎません。
そもそも視覚という概念そのものが、世界を断片的に認識するための細分化された手段の一つに過ぎないのです。
おすすめのカメラは?
この用途でおすすめなのは、
普通の安価なコンパクトデジタルカメラです。
素早く様々な設定を切り替えることができ、
撮影した画像をUSB接続してすぐに大きなPCモニタで観察できます。
写真作品が目的でないかぎり、魚眼レンズなどの特殊な第三の目が欲しくなっても、コンデジ用のアタッチメントか安価な魚眼レンズコンデジを買い足す方が安価に収まるでしょう。
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