パソコン編集と細部の書き込み、崩した表現のマッチングがクセになる「あさのいにお」作品。
かわいらしい女の子や、魅力的なキャラクターもポイントです。
しかし、油断は大敵。
絵柄に負けず何か「重たいもの」を投げかけてくるのがこの作者。
「うみべの女の子」も表紙はシンプルで可愛いですが、だまされないようご注意。
舞台は海辺、どこにでもある恋愛模様?
主人公の「小梅」はとあるショックな事件をきっかけに同級生の「磯辺」に近づきます。
「磯辺」は「小梅」に恋をするどこにでもいる男の子、と思いきやストーリーが進むにつれ「磯辺」の抱える闇が見え始めます。
読者は「小梅」と一緒にその闇に触れていきたくなります。
が、上手く行かないのがもどかしくもリアルな内容。
追われていたはずなのに、振り回されているのはワタシ?
最後に磯辺と小梅はどうなるの?
あまりにも辛い関係をもってしまう二人の行く末に、読む手は止まらなくなります。
ノスタルジックでリアルなエグさ
しょっぱい、思い出したくない、開けたくない!
繊細な10代を切りとる残酷で、エグい、あくまでも青春ストーリー。
浅野いにお作品独自の辛いシーンやゾワッとする描写も魅力の作品。
この磯辺と小梅を取り巻く人物たちにも注目。
幼なじみや片思いを抱える友人、憧れる先輩。コンプレックスを作る家族。
誰にでも起こりうる日常が、また読者の思い出にどんどんと重なりあって胸を苦しくさせます。
磯辺と小梅、気持ちの揺れ動きはとてもリアルで、有りがち。
誰もが二人の心理に心当たりがあるような、そんな不思議さを抱いてしまいます。
ぎゅっと凝縮された二冊に渡るストーリー!
2巻完結といえども、あなどるなかれ。
読み終えた後の鬱々とした気持ちはきっと皆さんの心を時折撫でては引き、また押し寄せてくることでしょう。
まるでうみべのように。
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