書き出しについて

書き出しというのは難しいと思いがちだが、コツそえ押さえればギュンとうまくなれる。
アメリカ出版会での有名な格言
「書き出しはその本を売る。最後の一行は次の本を売る。」
あいだも大事だが、頭とお尻は気を使わなければならない。
ノベリスタ大賞に応募される作品をみていて書き出しに思うものがある。
不安になると人は弁解をする。
書き出しの一番悪いパターンはこれから書くことに弁解をすることである。
これがどういうことでどんなことなのかを説明したがる。
それをやると途端に「この人は自信がないし、自分が書こうとしている世界を全然わかっていない」と読者に気付かれてしまう。
作家にとってこれをやっている内が一番楽。不安から説明しているうちその世界が出来上がるのではないかとおぼろげに信じてしまう。しかしこれをやっている間は全く伝わらない。
動きから始める
作品において登場人物の動きによってストーリーが動き出す瞬間がある。
ここにスパッと入れないと思う人は弁解や説明をすべて捨ててしまうのが良い。
動きから始めてしまえばよい。

審査員は説明や世界観は関心がない。人間は主人公が何をしてどのような人間なのかということにしか関心がない。単純に言うとストーリーとキャラクターである。
不安により弁解や説明を伸ばしてしまいがちだが、これは切るべきである。
たとえば、電車の中で殴られた話とかでもいいが、そういうところからぱっとはいれると緊張があるなど良い。アクションでも恋愛でも同じ。私がどういう人物かずっと説明するよりは最悪のパターンではあるが、交差点の角でぶつかってもいい。
ぶつかる場合でも、小説の場合、ほとんどが定型である。その定型をどう「ずらすか」を考えれば、きちんとそれも生きてくる。
順番(時系列)を入れ替えるのも有効である。
二つの不安
不安には以下の2種類がある。
- この物語は果たして面白いのだろうかという不安
- 自分はここで書かれている世界について知らないのではないかという不安
前者はプロになっても解決できないが、後者は解決できる。通常調べたりするが、完全に理解するのは困難。自分は理解していると思い込むことの方が良い。
小説はどんなに頑張っても嘘である、その嘘であることを受け入れる決心が不安を解消する。
1000冊読む

小説はパターンや決まりが本当に多く、それが繰り返し売れている。
よってミステリーでも恋愛でもなんでもそのジャンルを書きたいと思ったらとりあえずそのジャンルの本1000冊をバランスよく読む。そうすれば、そのジャンルのあらゆるパターンがわかるのでそこをずらしながら書くことができる。
作家が戦う相手として編集者がいる。彼らはものすごい量の本を読んできている。その人たちの目をごまかすためにはこの行為が必要。しかもこれをやっておくと後でうまくなる。大体の作家はここが足りない。
つらいと思うかもしれないがデビューするまでにということではない。書く腕はなかなか上達しないが、その小説が良いか悪いかを判断する批評力はずんずんアップしていく。読み続けることが大事。
加えて海外の本500、日本の本500の方が良い。日本のものは感情表現豊かだが、理屈をあまり好まない。前後関係なく急に移動するなどのポカをやらかしてしまう。一方西洋のきちんと論理を組んでいくものも読むべきである。
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icon-quote-left 引用元:https://www.youtube.com/watch?v=OZEnYrDV7NQ icon-quote-right