おそらく世界で一番有名なミステリーであろうシャーロックホームズシリーズは、長編4作と短編56作があります。
その中には傑作と名高い作品が沢山ある一方で、まぁ「微妙」というしかない作品も結構な数あり、その「微妙」な話のトップがこの「這う男」です。
ありえないトリック
あらすじ自体は「とある人が奇行をしだした。それを怪しんだ周りの人間が~」というありがちな筋ですし、実際の物語もありがちと言えばありがちです。
ただこの小説のトリックが色々な意味でトンデモナイ物で、近代の生物学的概念を持ってすると、いや科学的知識が無くても「ありえない」という事が一発でわかるトリックです。
個人的には結構好きなのですが、全体的な評価としてはあまり宜しくなくWikipediaに「多くのシャーロキアンが認める、正典中最大のナンセンス編。」と書かれるのが現状となっています。
「ナンセンスな一篇」として見るか「定番の恋愛悲劇」として見るか
以下ネタバレに関わる話になるのですが、この作品がかかれた1920年代は今から見るとかなりいい加減な化学が蔓延っていた時代であり、このトリックの元となる若返りの方法が社会的に注目を集めていたという経緯があります。
そういった先進的で話題の化学を元にしたSF的な作品と見るのが正しいのでしょうが、結局その化学は間違っていた訳で、後の時代の私たちから見たら評価がよろしくないのは仕方がないでしょう。
ただそういった科学的滑稽さを抜きにしてもさすがコナン・ドイルと言った具合で、「恋に溺れた老人が足元をすくわれる」という定番の話しながらしっかりと纏まっており、私個人としては結構好きです。
「ナンセンスな一篇」として見るか「定番の恋愛悲劇」として見るかはまぁ別として、話のタネとしては結構面白い作品なので一度読んでみる事をお勧めします。
この記事を書いた人

趣味は読書。主に短編推理小説を読んでいます。
個人的にはもっと短編推理小説が増えろと願うのですが、本格と長編が基本の世の中では同意してくれる人は少ないようです。仕方がないのでテレビドラマの「相棒」と古本屋で見つけた短編集で欲望を満足させているような日々と言った所。