セイフクを卒業できない3人
知られてはいけない「ヒメゴト」があるけれど、自分の欲望に逆らえない。
「少女」と呼ぶには歪んでいて、「女」と呼ぶには脆すぎる。
そんな3人の19歳が織りなす「セイフク」の物語。
大学に進学して、既にブレザーやセーラーを着る必要がなくなった3人。
しかし彼女達は制服を手放すことができません。
彼女達にとって、自分の欲望を満たすために制服は無くてはならないもの。
彼女達は制服に身を包むことで、欲望と平静の均衡を保っています。
一人は自分の「女」を呼び醒ますため。
一人は自分の価値を知らしめるため。
そしてもう一人は、自分の性を否定するため。
「自分を受け入れて欲しい」という欲望に素直になれない3人
誰もが持っている「自分を受け入れて欲しい」という欲望に素直になれない3人。
ありのままの自分の姿は、周囲からきっと受け入れられないだろうと知っているからです。
作中の人物はそれぞれ予想外の動きをします。
それでも、個々の登場人物のエピソードが丁寧に描きこまれているため、無理な感じがせず、どの登場人物もドキリとするほど共感できてしまいます。
彼女達の気持ちの揺れの描写がとても細かくて、読んでいて思わず固唾を呑んでしまいました。
彼女達の「素直な自分になりたいが、受け入れてもられないのではないか」という不安は誰もが通る道でしょう。
代弁してもらう快感
かつて抱いたことのある感情の断片を寄せ集めて代弁してもらっているような気がして、快感でした。
自分の中にも、彼女達のような倒錯した、誰にも言いたくないような感情があることに気づかされます。
これまで見ないふりをしてきた自分のうっぷんが晴らされるような気持ちになり、読んでいてとても快感でした。
果たして彼女達は制服を卒業できるのか、目が離せない作品です。
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