裏切り者ユダからみる愛の形【駈込み訴え】:太宰治

新約聖書とはまた違ったユダの物語

「ああ、あの人を殺して下さい。旦那さま。私はあの人の居所を知っております」

イエスの秘密の居場所を知らせた者には銀三十が与えられる
−−この噂を聞いたユダは役人の元に駆け込み、イエスの居場所と彼への憎悪を訴える。

作者の太宰治はイエス・キリストを役人に売り渡したユダのあまりにも人間的な姿を描き出す。
新約聖書において、ユダはイエスの居場所を知らせた冷酷な裏切り者としてのみ描写されているが、『駆け込み訴え』のユダは劣等感にもつれ、愛と憎しみの間に揺れる人間として描かれている。

他の使徒とは違ったユダの心情

「私はあなたを愛しています。ほかの弟子たちが、どんなに深くあなたを愛していたって、それとは比べものにならないほどに愛しています」

他の使徒はイエスを神の子と信じ、信仰によってイエスを崇め敬う。
これに対し、商人であるユダは天国も救いも信じない。
ユダはあくまで一人の人間としてのイエスに愛情を抱き、自らの思いが報われるように願いながら献身的にイエスの世話をする。
しかし信仰を持たない者の愛にイエスは見向きもしない。

「愛とは何か」を問い続けた太宰のひとつの答え

「ほんとうに、その人は、生まれてこなかった方が、よかった」

この一言にユダの報われない愛は憎悪へと転化し、イエスを役人に売り渡そうと料亭を抜け出す。

キリスト教が神による万人に対する平等な愛を説いたのに対し、『駈込み訴え』では自分に欠けた物を追い求める愛の形が描かれている。
整理されないままに自らの内面を独白するユダには人間味を見出さずにはいられない。

読者は「愛とは何か」を問い続けた太宰のひとつの答えと出会うだろう。

「無頼派」「新戯作派」の破滅型作家を代表する昭和初期の小説家、太宰治の短編。
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